加勢川源流から江津湖へ
烏渡橋→宮園橋→砂取細川邸跡→芭蕉園→スイゼンジノリ発生地→下江津湖
加勢川
藻器堀川に架かる烏渡橋下流の川面。
入園した正門から参道に戻り、左側の店舗の間から小さな路地に入ると、藻器堀川の下流部に出る。
市街地の建物などの合間を抜けて流れる藻器堀川は、総延長約4キロメートル、流域面積約3平方キロメートルの小さな川。烏渡橋を渡ると、川面を左手に見下ろすように歩く。対岸で成趣園から流れ落ちる水は、たった今、地下から湧き出たことが分かるような透明度の高さだ。烏渡橋に表記されている「藻器堀川」という川の名称は、その約200メートル下流の宮園橋で「加勢川」に変わる。藻器堀川と共に水前寺成趣園内の池が源流となり、ここから加勢川の流れが始まる。
宮園橋から加勢川は江津湖に向かって流れていく。
総延長約20キロメートル、流域面積約230平方キロメートルの加勢川は、地下水が湧き、複数の川の流れを取り込む、水量豊富な緑川の支流。その流れは、水前寺成趣園を出ると700メートルほどで江津湖となり、その後、水田地帯を抜け、川尻の町から3キロメートルほど下った六間堰を経て緑川に注ぎ込む。
路面電車の「市立体育館前」電停脇の横断歩道。
宮園橋から県道28号に出たら、一旦左へ迂回する。路面電車の「市立体育館前」電停の脇に延びる横断歩道を渡り、「砂取橋」から水前寺児童公園の中に入って行く。緩やかにカーブする川沿いの並木道が続いた後、細い車道に出る。この道に架かる小さな橋も「砂取橋」という。
ふたつ目の「砂取橋」から川沿いに延びる遊歩道。
ふたつ目の砂取橋の脇から遊歩道に入ると、すぐ左手に熊本近代文学館や熊本県立図書館の建物がある。ここはかつて砂取細川邸があった所。
明治時代の面影を今に伝える旧細川邸の日本庭園。
砂取細川邸は細川家の別邸で、明治7年に10代藩主斉護の妻・顕光院が住んでいた所。明治10年の西南戦争の後から大正11年まで細川家分家の住居となり、さらにその後は料亭や企業の保養所などとして利用され、昭和60年に図書館が建てられた。
水辺の遊歩道沿いに芭蕉林が続く。
現在、図書館裏の遊歩道沿いに残る庭園の池の形や飛び石の位置は、当時のままという。庭園の先には、高さ5メートルを超えるようなバショウの林が続き、これまでとは雰囲気が大きく変わってくる。この芭蕉園は、料亭が営まれていたころにはあったというもの。
水面の真ん中にポツンとある「ゾウの滑り台」。
遊歩道を進み、やがて視野が開けると、左手にゾウの滑り台が見えてくる。道沿いに住宅が続くようになると対岸も遠くなり、水面も大きく広がり湖らしい風景に変わる。江津湖がある「水前寺江津湖公園」は市街地の中に整備された公園で、水辺の歩道沿いには住宅も多い。この湖は、近所に暮らす人びとの憩いの場でもある。
住宅と加勢川の流れに沿って続く散歩道。
水前寺成趣園や江津湖で目にする水はすがすがしいほどに透き通っている。希少なスイゼンジノリが栽培できるのも、水がきれいなおかげ。スイゼンジノリは江戸時代、水前寺成趣園や上江津湖北岸、下江津湖東岸などに自生していた藍藻類のコケで、珍味として細川家から徳川将軍家への献上品とされていた。しかし、江津湖の水質変化や湧水量の減少などにより環境が悪化していることから、スイゼンジノリ発生地は金網の中で保護されている。
金網はスイゼンジノリに必要な水の確保のため。
スイゼンジノリの保護エリア沿いの道から公衆トイレの横を通り過ぎると、駐車場があるスペースに出る。右手の対岸へ続く道に架かる4つの橋に記されているのは、「加勢川」である。
江津湖の地下水
上江津湖と下江津湖をつなぐ「くびれ」の区間。
江津湖は、長さ約2.5キロメートル、周囲約6キロメートル、面積約50ヘクタール。江津湖と下江津湖に分かれ、その間がくびれた、ヒョウタンのような形をしている。通常の湖とは異なり、川が膨張した「河川膨張湖」と呼ばれる湖だ。
コースの所々にベンチがあるので適度に休憩を。
駐車場を直進し、車止めから芝生が広がるエリアに入ると、やがて右手の湖越しに金峰山が見えてくる。国道57号の手前で健軍川に架かる小さな「第三湖東橋」を渡り、T字路の突き当たりを右へ。木々の中に道が延び、上江津湖と下江津湖をつなぐ「くびれ」の部分に入って行く。緑に覆われた道は、左側に住宅が続き、右側には川が流れる。「くびれ」の入り口に当たる江津斉藤橋の下から600メートルほど歩き、県道236号に架かる画図橋をくぐり抜けると、やがて正面に下江津湖の風景が広がってくる。下江津湖の面積は、上江津湖の3倍ほど。湖面に浮かぶように中ノ島があり、遠くに飯田山、さらにその先に九州山地の山並みが見える。歩道の傍らで湧き出す地下水が、散歩やジョギングなどで行き交う人びとののどを潤す。
下江津湖畔から見る中ノ島。背後は九州山地。
27万年ほど以前から、阿蘇山で4回の大噴火が起きた。噴出し流れ出た火砕流は、西に30キロメートルほど離れた熊本市中心部にも及び、江津湖周辺の地下には、水をとどめやすい溶岩層が広がっている。周囲約100キロメートルの広大な阿蘇カルデラや外輪山などに降った雨は大地に染み込み、地下水となり有明海まで流れていく。その途中で一部が溶岩層に滞留し、地表に湧出する。それが、水前寺成趣園や江津湖、さらに南東3キロメートルほどの所にある嘉島町の浮島熊野神社などで湧き出している地下水だ。環境省の「平成の名水百選」に選ばれた、「水前寺江津湖湧水群」と「六嘉湧水群・浮島」の清水である。
熊本市動植物園の南口の前に湧き出す地下水。
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