松島橋から上流側に見る旧伊万里津。

　かつて人家も少なかった伊万里の浦。朝鮮出兵の際、鍋島氏の基地に使用され港として整備された。大きく発展したきっかけは、内陸部に十数キロメートル入った山里で、日本初の磁器生産が始められたこと。寛永年間（1624～1644年）のころから、有田などの肥前地域で作られた磁器がこの地に集められ、「伊万里焼」として伊万里津から積み出された。
　伊万里焼は主にオランダ東インド会社により、出島を経て東南アジアやヨーロッパなどに輸出された。動乱で中国磁器の輸出が困難になり、代替品として日本磁器に対する需要が生まれたことによるもの。それも中国の輸出が再開し、さらにヨーロッパの窯が発展すると、伊万里焼の輸出は衰退する。一方で、伊万里や紀州（和歌山県）、筑前（福岡県）などの商人により、国内向けの出荷が本格化した。
　当初、肥前磁器は伊万里津から積み出されたため「伊万里焼」と称された。明治30年の鉄道開通により直接出荷されるようになると、「有田焼」や「波佐見焼」など産地名を冠した呼称が一般的になる。
　往時、船着き場があった相生橋を中心に、伊万里川に沿って陶器商家などの白壁土蔵造りの建物が並び、江戸後期には「千軒在所」と称されるほど町は繁栄した。
　かつてこの地から輸出された壺や置物などの伊万里焼が、再現され相生橋などに並ぶ。伊万里川沿いの道を、伊万里焼の作品を鑑賞しながら散策するのもいい。

参考資料：伊万里市陶器商家資料館「白壁」、伊万里市観光協会「伊万里のまち探検マップ」、他

相生橋に飾られている伊万里焼の大壺。