和仁三兄弟像。中央が城主親実、右が親範、左が親宗。

　天正15年（1587年）、豊臣秀吉の軍勢が和仁（わに）氏の居城・田中城を取り囲んだ。籠城軍約900人に対し、攻城軍は安国寺恵瓊と小早川秀包が指揮する約1万人の大軍だった。
　山城の周囲約5.4キロメートルを二重の柵と諸大名がくまなく取り囲み、中央部に堀や柵が巡らされた中に和仁氏と辺春氏の陣が立つ。日本最古の城攻めの絵図とされる「仕寄陣取図」が、西側から見たその様子を描く。駐車場の傍らに立つ和仁三兄弟の武者像の北東に見える小高い山が、主郭や空堀、曲輪の跡などが残る田中城跡だ。
　同年6月、秀吉は佐々成政に肥後一国を与え、一方で国衆に所領安堵の朱印状を渡していた。しかし、肥後入国後の成政が秀吉の命に反して検地を行おうとしたことに、この争いの原因がある。有力国衆の隈部親永は朱印状を盾に拒み、隈府城（菊池市）や城村城（山鹿市）で籠城。8月には甲斐氏や菊池氏、城氏などの国衆らが、佐々氏の拠点である隈本城を攻撃するが、いずれも鎮圧された。
　和仁氏の籠城開始は10月ごろ。大軍を相手に約2カ月間を耐えたが、最後は内部の裏切りにより12月5日に落城した。
　秀吉は翌天正16年、上使衆を肥後に送り込み検地を執行し、国衆は約1000人が処刑、大将分の首約100は大坂に送られた。成政が責任を取らされ自害した翌日、加藤清正に肥後半国を与えるとする朱印状が発行されている。

参考資料：佐々瑞雄「佐々家覚え書」佐々家覚え書刊行会、富田紘一『定本熊本城』郷土出版社、他

秀吉が出陣を命じた諸大名らに包囲された田中城の跡。