きしまやま
杵島山
~男女が出会う歌垣の山~
きしまやま
杵島山
~男女が出会う歌垣の山~
肥前国や筑後国を望む杵島山に古代の恋の花が咲いた。
「村々郷々の男も女も酒を携え、琴を抱いて、毎年春秋に手をとりあって登り見渡し、酒を飲んで歌舞し、曲が終わって帰る」。「『肥前国風土記』逸文」に述べられた杵島山での歌垣の様子だ。歌垣は、恋人や結婚相手を探す場だったという古代の民俗行事。春と秋に山や水辺などに男女が集まり、互いに恋の歌を掛け合った。筑波山(茨城県)や歌垣山(大阪府)と共に、歌垣の山として古くから知られた「日本三大歌垣」のひとつが杵島山である。
「杵島山」は、勇猛山・犬山岳・飯盛山・白岩山などからなる複数の山の総称。このうち、犬山岳に「歌口」という地名が残ることから、その一帯で歌垣が行われたと考えられている。
犬山岳の歌垣公園では至る所で短歌を目にする。当時の歌垣で詠まれたという「杵島曲(きしまぶり)」の歌碑の裏側にはかな表記も刻む。「あられふる きしまかたけを さかしみと くさとりかねて いもかてをとる」「杵島岳が険しいので、よじ登るのに草をつかみ得ないで、一緒に登る愛しい人の手をつかむよ」という意味。
晴れた日には杵島山の緑の先に白石平野の田畑や有明海、左手に脊振山地の山並みなどを遠望する。当時の、出会いを求めてこの地に集まってきた男女が眺めたであろう風景だ。
犬山岳(標高342メートル)山頂には肥前犬山城の展望所があり、さらに雄大な眺望を楽しむことができる。
参考資料:吉野裕『風土記』平凡社ライブラリー、他
「『肥前国風土記』逸文」に記された「杵島曲」の碑。
人里離れた犬山岳中腹部にある歌垣公園。
アクセス:歌垣公園(白石町堤)
紹介スポット:歌垣公園 → 肥前犬山城
移動手段:クルマ