四季折々に豊かな彩りを見せる杉の馬場。

　関ケ原の戦いにおける戦功により慶長5年（1600年）、筑前国は黒田氏が支配することとなった。福岡黒田藩初代藩主・長政の遺言により3男の長興に5万石が与えられ、元和9年（1623年）に福岡藩の支藩として秋月藩が誕生。翌年に陣屋形式の秋月城が置かれ城下町が築かれた。朝倉市の中心部から国道322号を北上し、野鳥川をさかのぼるように進んで行くと、文化7年（1807年）に築かれた目鏡橋が架かる。
　旧城下町の町並みでは、藩政時代の町割りや水路などがほぼそのまま。町を歩けば武家屋敷や町家、石垣などを見掛ける。
　直線状に延びる緩やかな上りの勾配の道沿いでは、江戸時代に建てられた石田家住宅などが城下町の面影を残す。通りから脇道に入れば、明治9年の秋月の乱で旧藩士が決起した西福寺跡や田中天満宮がある。
　目鏡橋の前から700メートルほど進んだ所で右に入り、野鳥川を越えると桜並木の道。秋月城に登城する際に使われたこの通りは、馬術の訓練場でもあった。スギの大木があったことから「杉の馬場」ともいう。道沿いには、武家屋敷が立ち並び、秋月城や「梅園」と称された藩主の館などが置かれた、秋月藩の中心地だった。
　長屋門は秋月城で唯一、当時の場所に残されているという。黒門は、黒田氏以前にこの地を支配していた秋月氏のころから受け継がれているもの。町を取り囲む、標高860メートルの古処山などの山並みにも、往時の雰囲気が感じられそうだ。

参考資料：「秋月城」朝倉市HP、他

かつては秋月城の裏手門として利用されていた長屋門。