櫨方門から入城して重なった石垣越しに見る大天守閣。

　豊臣秀吉から肥後半国を与えられた27歳の加藤清正が、隈本城（古城）に入ったのは天正16年（1588年）6月。新城（熊本城）の建設は着工が慶長4年（1599年）、完成が同12年という。面積約1平方キロメートル、周囲5キロメートルを超える規模の敷地に、大小の天守閣や50基ほどの櫓などからなるものだった。
　城郭が置かれたのは、南北に延びる京町台地南端の茶臼山。東側から南側にかけて坪井川と白川を通し、内堀と外堀にした。最大の特長は「武者返し」の別名を持つ石垣で、上に行くほど急勾配になる。穴太衆（あのうしゅう）と呼ばれた近江（滋賀県）の石工集団によるもので、その豪壮さと優れた機能は広く知られていた。
　儒者・荻生徂徠は『鈐禄（けんろく）』という書を著した。その中で、清正の家臣に飯田覚兵衛と三宅角左衛門という2人の石垣の名人がいることに触れ、大坂城と名古屋城と共に清正が手掛けた城として熊本城を紹介している。このことが日本三名城のひとつとされる根拠という。
　明治10年（1877年）の西南戦争では、50日間以上に及んだ籠城戦を耐えた。薩摩軍の攻撃が始まる3日前の不審火で天守閣や櫓などを失っており、石垣の機能が発揮されたといえよう。
　南口の櫨方（はぜかた）門から入城すると、迫力ある石垣の姿を見ることができる。その間に続く石段を上り詰めれば、大小ふたつの天守閣がそびえ立つ。

参考資料：『新熊本市史』、富田紘一『定本熊本城』郷土出版社、他

石段を上り切るとふたつの天守閣。頬当御門からすぐ。